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2013年 08月 06日

8月6日

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今年もこの日がやってきた。
年々、当然のことながら、歳月は過ぎていく。
一年間、いろいろなことがあったが、これといって幸いなことはなかった。
が、この日になると、自分のこの何事もない日々について、考えざるを得ない。

先人から受け継いできたことが、平和なことによって、失われつつある。
失われてよいものもあるのだろうが、個人の血水の努力によって重ねてきたことがなくなるのは、何か危険な気がしてならない。

そうかといって、その伝承に全力を捧げていない自分に目を向けると、なんともいえない複雑な心境である。

戦争を風化させてはならない、とはどういった意味であろうか。

考えさせられることが多い。

今日は一日弓を引かせていただく機会を頂戴した。
久々に、感謝しながら、弓を手にしたいと思う。
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# by mitsunori55555 | 2013-08-06 08:15 | 偶感
2012年 12月 31日

大月籠

本年も、まもなく終えようとしております。

本年は、私にとって大きな心の支えと成っていた方が、たくさんにあの世へと旅立たれました。
実に寂しくございます。

中川師の他界は、覚悟こそすれ、やはり大きなものでございました。
何せ、弓聖阿波範士の御在世の折、壮年であらせられた方でございます。

本年は、仕事の方はじっくりと、いいものをさせていただきました。
技はさほど進歩しなかったように思いまするが、古いものにたいする心持ちが変わってきたように思います。

古人との語り合いがいかに重要かと思うものでございます。

技を極めんとするときに、私ども一人の力というものは、微力なものでございます。
古人の極めたものを一刻も早く捕まえ、その上に更なる技を積まねば、とても古人を凌ぐものはできようはずがございません。否、追いつくことさえ難しゅうございましょう。

それが少しわかりはじめたように感じるこの頃であります。

皆様におかれましては、この一年、いかなる年でございましたでしょうか。

来る年は、また今年とひと味違った、良い一年となりますことを心よりお祈り申します。
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# by mitsunori55555 | 2012-12-31 19:51 | 偶感
2012年 11月 25日

続 中川範士 2

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先生には、明治から大正を生きた日本人の、独特の美学がおありだったように思う。
趣味はいわゆる骨董品や民芸品におありであったが、その収蔵品の一つ一つには、なにか面白いエピソードがついていた。
刀や茶器、文房具などはどれも適当な「手垢」がついており、新品にはない風合いをおびていた。
頂戴したご愛用の耳かきは、ご自身が作られた信用金庫にお勤めになっていた時から使用されていたということで、耳の油が浸透して飴色に透き通っている。こんな思い出のあるものを頂戴してもよいのかと思ったが、また作ればよいと仰せであったので、恐縮しながら頂戴したのを覚えている。
古いものを、実に大事になさっていた。

弓の技について、よくこういうことをおっしゃていた。

「手の甲を指の節を見て柔道家とわかる、手のひら虎口を見て弓道家とわかる、そういううちはまだまだハナタレ小僧で、技が身につくと、手を見たくらいでは何をやっているかわからなくなる。」

昭和の三筆と謳われた書道家、日比野五鳳先生は、古典に習って作品を展開するとき「お里がしれてはならない」というようなことをどこかで仰せになっていたのを覚えている。
日本料理では、出汁を取るときに、何からとった出汁かがわかってはならないという料理人もいる。

先生は、技というものを、そういうものとお捉えであったようである。
表面的な凄味は見えないが、その凄みは内面的なものとして迫ってくる、とでもいえばよいであろうか。
先生の師、市川虎四郎範士は、手にはタコ一つなかったというが、その息合いや弓勢は凄まじく、弓を倒す時さえ音がするようであったという。
 「先生は、そりゃあもう全然話にならん、今の弓引きとは違う。息合いは『ハー』と聞 こえるようじゃったし、矢は肩ごしにもっと後ろから飛んでくるような勢いじゃった。 弓倒しも、今みたいにジワリと倒すんじゃあない、ブンと音がするようじゃった。」

その人に馴染んでいるというか、なんというか、いわゆる「自然」なものをよしとする思想は、なにも特別なものではないが、先生はそれを実見されていたのであろう。
そのものが持つ光や、音を非常に大事にされていた。

刃物がお好きで、鉋の刃などを見ていただくと、必ず日に透かして色をご覧になり、その音を聞かれた。海のすぐそばのお座敷で、やわらかい光の中で拝見したいろいろな道具の、影を伴う光や、潮騒を後ろに聞く、あの澄んだ鉄の音は、今でも鮮明に残っている。

貴重な体験をさせていただいたと思う。
先生の美学は、今でも私の基礎をなしているといえる。
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# by mitsunori55555 | 2012-11-25 13:12 | 偶感
2012年 11月 23日

続 中川範士


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先生には、いろいろなことを教えていただいた。

審査のときなどは、その道すがら、弓を肩に掛けて歩くと、それだけで審査は落第であるというようなこと、先生の道場での射会中、退場しようとすると、師範席からお声かけがあり、お傍に控えると、
「こがな中関じゃあ外に出られん(こんな中関〈弓の弦で、矢を番える部分に麻で補強している部分〉では外の試合に出られない)」
と、ご自分の麻ぐすねを取り出し、直して下さったこともあった。

弓をする時に、服装や、道場での振る舞いについてあれこれ仰る方は実に沢山おいでであるが、先生はそれをきちんと実践され、表面的なことにはあまり細かく仰らなかった。
先生の仰ることなら聞こうと思った。

射法のご指南については、戦弓であることを一貫されていた。
最後にお伺いした時も、アイパッドで私の射をご覧になり、手首の力が過剰であることと、手の内のご指摘をいただいた。
これは、15年間一貫して教えていただいたことである。

私などは、指導者であるときには、年々に射に対する考え方が変わり、指導にもそれを反映させてしまうのであるが、先生のご指導は決してぶれることはなかった。
そしてそれは、ご自身がご覧になり、私淑された市川虎四郎先生の射法を基礎とされたものであった。

我々が、師を持ちながら、それに斟酌を加えて弓を習う態度とは違う。
しかし、先生はたまに、ご自身もそれを疑っていたこともあるが、長年習っていると、それができるようになることもあり、また、侍上がりの人でしかできないこともあるということが分かったというようなことをおっしゃっていた。

まだ、先生の生きられた年数の半分にも達していないのだから、わからないことばかりである。
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# by mitsunori55555 | 2012-11-23 10:45 | 偶感
2012年 11月 20日

老師 御仏に


11月16日、中川善雄先生が急逝された。未明に胸の痛みを訴えられ、病院に搬送され、一時意識も戻ったようであるが、午前八時過ぎ、息を引き取られたとのこと。

遂にという思いである。
最後にお会いしたのは8月18日であった。その時もいつもとお変わりなく、いろいろなことをお話いただき、食事を共に頂戴し、年内にまたご挨拶にあがることをお伝えし、お別れした。
12月19日で百十一歳になられる予定であった。

明治34年、四国善通寺のお生まれである。
我が国の大変な時代を生き抜いてこられたのであろう。

先生に初めてお目にかかったのは、平成7年の冬であったか、竹原高校という高等学校での試合であったように記憶している。
寒い時期で、黒紋付に、頭にはエスキモーのようなかぶりものをされていたのを覚えている。その時は九五歳くらいでいらしたのであろう。
弓で拵えた杖を持ち、我々が巻藁を射る様子をご覧になっていたのを記憶している。

それ以来、一五年あまり、先生には実にいろいろなことをお教えいただいた。
というより、私の弓道観の基礎は、先生にあるといって過言ではなかろう。
先生からいただいたいくつものお言葉が、先生のご表情とともに思い出される。
今から思えば、大変貴重なことである。

土曜日、関係の方に連絡すると、日曜日がお通夜であるということだったので、都合をつけ、最後のお別れにあがった。
たまたまの休みであった。
先生は、一度京都祇園の一力の座敷にあがり、大石内蔵助の気分を味わいたいとおっしゃっていたので、前夜は祇園のお店に伺い、一人陰膳をし、弔い酒を差し上げた。

朝、一路竹原の港から、先生の島にフェリーで伺った。
曇っていた空が、島の港に着くと、急に晴れた。
この道を通ることも、無くなるのかと思うと、なんとも言いようがない。

先生のお宅に着くと、当たり前だが、玄関に黒い幕がかかっていた。
もう先生をお呼びしても、お返事はないのだ。
通夜のために用意された焼香台の御遺影は、少し元気のないお顔で、あまり好きな写真ではない。

数年ぶりに会うご家族に誘導されて、先生の下に伺う。
柩に入られて、アクリルに遮られていたものの、先生は文字通り眠るように、実際にお休みのときよりも眠るように、静かに横たわっておいでであった。

お亡くなりになった日に書いた、お経をお供えし、先生と暫しお話をした。
もう、大きな声で、耳元でお話しなくてもよいのだが、それが却ってさみしい。
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# by mitsunori55555 | 2012-11-20 21:55 | 偶感