2010年 12月 19日
御覧に入れますのは、控え周りの革張りでございます。 この部分には、控えの張り込みと帽子とをきっちりつなげるという役割もございますし、この部分にさまざまな柄の革を用いて飾ったものもございます。 ここには特に傷などのないように気を遣う部分であります。 曲面を張り上げましたら、太糸で縫い締めます。 針が太いために、この部分には強い力とともに、厚く堅い部分を精確に縫い込む技が必要であります。 古いもので、他と変わらぬほど細かく縫って居るものもございますが、大変な技術と根気でありましょう。 この部分に腰飾りを施し、上端に一文字飾りを致しますが、この一文字飾りは大変難しいもので、現在、古人ほどの美しさで仕上がった仕事はまだ目にしたことがございません。 今では飾りなどはほとんどすることがない故のことでありましょう。 昔は飾りが当然のことであったがために、熟練者がさらに熟練したわけでございますから、それに及ぶのは大変なことであります。 師も、正利ほどの飾りはできるものではないと申しておりました。 方法は解っておっても、革の厚み、下地との接着、糸の引き加減などは、相当の修練がないと美しく仕上がるものではございません。 先般、知人で、おそらくは日本で頂点の技術を持つお一人であろう大工職の方とお話ししました。 彼曰く、「よく技を残せというが、これは間違いで、ものを残すんだ」 なるほど、考えさせられる言葉でございます。 豊月氏は著述の中で、各流派のものを一個ずつ制作したいと仰せでございましたが、果たしてそれは我々の目にできぬものでしょうか。 どなたかご存じ有ればお教えくださりたく存じます。
by mitsunori55555
| 2010-12-19 15:15
| 制作
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