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芸州三則の「仕事」   〈弓道 ゆがけ制作〉

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2012年 03月 04日

飾り考

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近頃、飾り縫いについて、思うことがございます。
実用面から考えますと、必要のないものでございます。

それを何故古人は尊んで参ったのでありましょうか。
手間暇も、お金もかかることでございます。

単に美意識の違いというようにまとめてしまって良いものかどうか、吟味いたしております。

針目は、弽師の腕が顕著に現れるところでございます。
精確に、かつ丈夫に縫い締めてまいるということは、簡単なようで、難しいものであります。

絹糸の光る朝方、絹糸の光に吸い込まれるように、仕事をしたくなることがございます。

何か新たな飾りでもできぬものか、少々思案いたしております。

# by mitsunori55555 | 2012-03-04 09:39 | 制作
2012年 02月 27日

脂革考

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三河弽に脂革を施しておるところであります。
脂革は、その部分の摩耗が激しいがために、取り替えがし易いように付けられてまいったようであります。
この部分に、松脂の油分を調整して付けるのであります。
三河弽の使い手のお話としては、松脂のギリ粉では粘りが強いがために、杉脂を用いたということであります。

この部分、革に厚みがありますことは、取懸け具合に得失がございます。
薄ければ感覚が鋭くなり、厚ければ痛みを気にせずしっかりと引くことができるわけであります。

これは、取懸け指の方だけではなく、弦を掛ける親指の方も同様のことが申せます。
現今は帽子を固めておりますゆえに、あまり得失がございませぬが、いわば弽が素手に近いほどに思いがままになるわけでございます。

広島県にご健在の中川老師は明治のお生まれでございますが、よく聞きしお話に、丹波の山奥の百姓が遊びで50キロもあろうかという弓を素手で引いておったということがございます。
何故左様なことができるかといえば、毎日樫の柄物で力仕事をしておればとのこと。

昔人の身体能力には驚嘆させられまする。

これを語り草にするのは容易でありまするが、伝統を受け継ぐ我々弓引きは、少しでも近づくべく修練いたしたいものであります。

# by mitsunori55555 | 2012-02-27 12:20
2012年 02月 01日

研ぎのこと

職人の基本となります技に、刃物の研ぎがございます。
特に、革を扱う職では、良質の砥石と刃物、そしてそれを研ぎきる腕が必要であります。

どれが欠けましても、仕事は一流にはならぬものであります。

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刃物は基本的に平面が出せることが初めでございますが、地金と刃金は硬度が異なりますゆえに、刃先に力をかけるのでございます。

写真にございますように、刃先の線が出るようにと仲間に教わったものでございます。

# by mitsunori55555 | 2012-02-01 20:41 | 道具
2012年 01月 31日

これは、とある池端に自生しておりました古木でございます。
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ご覧になればお分かりでございますように、かなり幹がねじれてございます。
これは木が枝葉を張りまして、それが風に吹かれ、或いは目方が増し、長年かけて捻れて参るのであります。

私が好むところであります奈良の東大寺南大門には、この捻れの強い巨木が柱となっております。

斯様なる木は、材料として切り出しますと、暫くは捻れの癖が戻ろうといたします。
癖が十分に取れぬうちに構造材として用いますと、周囲の細い材木を曲げ折るほどの力をもつものでございます。

法隆寺の西岡棟梁がご著書のなかで木についていろいろとお話でございますが、癖のある木ほど強いということでございます。
この癖をどのように活かすかが、職人の腕の見せ所であります。

# by mitsunori55555 | 2012-01-31 23:28 | 偶感
2012年 01月 30日

余技

これは、以前作成した筆入れです。
仕事の合間に、革の余りがでますと、こういったものを作ってみたりします。

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こういったものには、銀面のついた、光沢のある革が、いわゆる艶がでてまいりますので良いように思いますが、使うほどに朽ち果てていくものを、風合いを殺さぬように使うのも、これは面白いのではないかと思います。
 
先日、革製の足袋を見る機会がございました。やはり当時としては、鹿革は格好の防寒着でしたようなこともあり、高級品であったものと思われます。
足袋は歩行にて革も糸も酷使されますので、縫込みもしっかりしておらねばならぬように思います。

こういったものからも、手本にすべきことはたくさんに見て取ることができます。

# by mitsunori55555 | 2012-01-30 09:47 | 制作